「ヴォイスの客」はらすすのジャズよもやま話 連載第19回 「スターバックスコーヒー」とジャズ 僕は高校生の頃にジャズを好きになって以降、ずっとジャズ喫茶に入り浸ってきま した。その最大の理由はジャズという音楽を聴きたかったからですし、実際僕はジャ ズ喫茶からさまざまなスタイルのジャズを学んできました。だけど、僕がジャズ喫茶 に行きたくなるもう一つの訳として、僕がコーヒーが好きだという理由も挙げられる のです(しかし、実際には昔のジャズ喫茶のコーヒーの味といったら、口が裂けても 決して美味しいなんて言う事の出来ない店が多かったのですが…)。 特に、レコード屋巡りをして足が棒のようになったり、探していたレコードが見つ かってうきうきしている時などにはたまらなく、ジャズ喫茶に行って好きなジャズを 聴きながら美味しいコーヒーを飲んでひと休みしたいなあという気分になります。た だ、中年のおやじが1人で、買って来たレコードのジャケットを舐めるように眺めな がらニヤついているなんていう光景は、周りの人達から見ればさぞかし無気味な事で しょうけどね…。ところが、近年はジャズ喫茶もどんどん閉店を余儀なくされ、ジャ ズ喫茶に行きたいと思っても付近にそのようなお店は見つからずあきらめざるを得な いという状況に遭遇する場合もしばしばです。そういった時には、ジャズの音色は諦 めてとりあえずコーヒーだけでもという事で、セルフサービス形式のコーヒーショッ プ、中でもレコード屋巡りの帰りなどは何となく気分もアメリカンですので、「スター バックスコーヒー」等のアメリカからやって来たコーヒーショップに行く機会が多い というのが最近の僕の生活パターンです。 従来、アメリカでは日本の喫茶店のようなコーヒー専門で飲ませるといったタイプ のお店は余り存在していませんでしたが、近年シアトル辺りからこのようなスタイル のお店が増加し、現在全米中に拡大されているようです。中でも、「スターバックス コーヒ」は日本で急成長し店鋪拡大していますが、昨年夏に僕がシアトルを訪れた際 には、シアトルの街では「スターバックスコーヒ」のみならず「タリーズコーヒー」 およびシアトルズベスト」の3つのコーヒーショップが街中のあちこちに店鋪を構 えており、まさしく三つどもえ状態を呈していました。ちなみに「スターバックスコー ヒ」の第1号店は1971年にシアトル市内のPike Place Marketという処で開店し、同 店は現在では観光地化していますが、左の写真のように店のロゴも我々が見慣れた他 の店のものとは色調を異にした茶色を基調としたものであり、記念すべき第1号店で ある事を誇示しています。 ところで、最近「スターバックスコーヒ」のショップ内でジャズのオリジナルCDが 売られているという事を皆様御存知でしょうか?いつ頃からこういったサービスが開 始されたのか定かではないのですが、僕が最初に気付いたのは今年の3月の出来事で あり、その頃には“The Heart of the Matter”とのタイトルが付いたFrank Sinatra のCapitolレーベルからのコンピレーションアルバムを販売していました。今までに は見た事もない魅力的なジャケットにも惹かれて即その場で購入してしまったのです が、その後も月に1枚程度のペースで新しいCDの販売を続けており、今年の4月 はDave Brubeck Quartetの2002年のライブ盤を、5月にはこれはジャズではないので すが、“Ol`a Brasil”というタイトルでサンバやボサノバの名曲を集めたコンピレー ション盤(但し、Stan GetzとAstrud Gilbertoのイパネマの娘等も収録されており、 これもジャズファンにも嬉しいCDです)を、そして今月にはWest Coast Jazzの名演 を集めた最高にクールで粋な、その名も“West Coast Jazz”というタイトルのCDを 発売しています。これらのCDは1950円というお小遣いで手の届く価格で販売されてい るのも嬉しく、僕にはスターバックスへ通う新たな楽しみが出来つつあります。 また、どうやら最近アメリカの「スターバックスコーヒー」ではジャズのライブ等 も盛んに催されているようであり、上記のDave Brubeck盤や、これはスターバックス オリジナルではなく通常のCDショップで売られているCDですが、Ray Brown Trioの “Live At Starbucks”(Telarc)という作品等は「スターバックスコーヒー」の店 内でライブ録音されたものです。だけど、僕の場合ジャズ喫茶でレコードやCDを聴く 場合にはコーヒーが最適なのですが、ライブを聴いて“イエ〜イ”等と叫びながら盛 り上がるためにはビールかジントニックがないと消化不良になりそうで、“生のジャ ズライブの場でよくみんなコーヒーだけで我慢しているなあ”等と考えてしまうので すが、こんな事を思うのは果たして僕だけなのでしょうか? ではまた来月、そろそろ梅雨が近付きうっとおしい毎日になりますが、皆様どうぞ お元気でお過ごし下さい。 (2003年6月10日記) |
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